1つの物件や土地に複数の所有者が登記された「共有名義」の不動産の場合、不動産売却に関しても個人名義のケースとは異なり様々な制限が生じます。
共有名義の不動産とは、複数の所有者(名義人)が存在している不動産です。そして、対象となる不動産に対して、それぞれの名義人が持っている所有権の割合を「共有持分」と呼びます。
例えば、両親の死によって子供である兄弟姉妹が実家を相続するとなった際に、兄弟姉妹の4人全員が実家を相続・共有する場合、それぞれが所有者として共有名義の不動産になります。その上で、例えば長男が所有権の4割を取得し、残りの次男や長女・次女がそれぞれ2割ずつ取得することで、個々に共有持分が設定されることもあるでしょう。
共有不動産に関しては共有者に対して「共有持分権」が発生し、共有持分の割合に応じて売却や増改築、他人への賃貸借、修繕や所有権の移転登記など行えることが変わります。具体的には、不動産の売却(変更・処分行為)は共有者全員の合意が必要ですが、単なる修繕(保存行為)であれば共有者が単独で行うことが可能です。
共有不動産の場合、上述した通り、共有者が個人で持っている所有権を他者へ譲渡・売却するだけであれば共有持分権として認められています。しかし不動産そのものを売却する場合、共有者全員の合意がなければ実行することができません。
そのため、根本的に不動産売却のハードルが高くなる上、自身の持っている共有持分の所有権を売却しようとしても、その後の不動産の扱いに関して難易度が高いため、そもそも一般の買い手が付きにくくなることも問題です。
さらに、例えば共有者の中に認知症の人がいたり、何かしらの理由でかたくなに交渉に応じてくれない人がいたりする場合、いよいよ合意形成が困難になってトラブルが深刻化するリスクが増大します。
共有不動産の売却を進める上で、最も理想的とされる方法は、共有者全員が合意して不動産を第三者へ売却することです。売却益についても共有持分に応じて分配されるため、不公平感を解消しやすいことも重要です。
また通常、共有不動産の売却を行うに当たっては後々のトラブルを回避するためにも最初に代表者を決めて、他の共有者から委任状をもらった上で、不動産売買についての交渉を進めていくという流れになります。
なお、売却益の分配割合について、共有持分でなく個々の話し合いで割合を決めるといったことも可能です。
共有者全員の合意が得られて、代表者への交渉委任もスムーズに完了すれば、不動産の売却は個人名義のケースとあまり変わりません。しかし共有者間の交渉が難しかったり、合意に至るまで時間がかかりそうだと感じたりした場合、先に自分の持分を他の共有者へ買い取ってもらうといった方法も考えられます。
不動産の売却を進める前に共有者間で共有持分の売買を完了してしまえば、その後は持分を買い取った人物が代表者になったり交渉を行ったりすることになります。
ただし共有者へ持分を売却する際、相場よりも明らかに安い金額で取引した場合、実質的に「贈与」と見なされて、持分を買い取った側に贈与税が課せられることもあるため注意してください。
共有不動産が「土地」である場合、持分割合に応じて対象の土地を分割(分筆)し、単独名義(個人名義)の土地にするといった方法もあります。
土地を分筆して、共有名義人が改めて各自で土地を所有することになれば、単独名義の土地として売却することが可能です。ただし土地の上に建物がある場合、建物の区分所有権は分筆できず、また土地の面積が減少するため不動産としての価値も減じてしまったり、買い手が付きにくくなったりするといったデメリットもあります。
共有者間での持分取引や土地の分筆などが困難な場合、自分の持分を第三者へ売却するといった方法もあります。
例えば、どうしても共有者間の話し合いが進まない中で、早く持分を現金化したいと考えた場合、不動産の買取業者へ自分の持分を売却することも可能です。ただし、この場合は買取価格に関して相場よりも大きく減額されたり、売却後にトラブルが生じて他の共有者との関係が悪化したりといったリスクがあることも考えておかなければなりません。
第三者を介する方法として、裁判所に申し立てて「共有物分割請求訴訟」を行い、それによって物件の売却や土地の分筆を進めるといった方法も考えられます。
ただし、司法手続きによる解決は最終手段であり、どのような結果になっても共有者間で遺恨が生じたり、関係が悪化したりといったリスクが増大してしまうことも重要です。また自身の要求が100%通るとは限らず、司法判断によって自身に不利な結果が認められてしまうリスクもゼロではありません。
共有不動産の売却について、最も理想的な方法として共有者全員の合意が得られたケースを想定した場合、一般的な不動産売却の流れは以下のようになります。
なお、上記の交渉を進めていく中で、突然に共有者の中から売却に反対する人が現れた場合、話が全て台無しになる恐れもあります。そのため最重要なポイントは最初の合意形成と、さらに合意に基づいて信頼できる不動産会社を選び、売却活動や売買契約を進めていくことと言えるでしょう。
共有不動産の売却を進める際には、例えば以下のような書類が必要です。
登記情報について記載されている書類であり、名義人の証明としても機能します。
土地の境界や面積を明確にする書類です。
共有者全員の合意を前提として、全員の身分証明書や実印・署名などが必要です。
1つの不動産に複数の所有者が存在する共有不動産の売却には、あらかじめ共有者全員の合意が必要であり、個々の所有者が単独で売却を決定することができません。そのため共有名義の不動産売却は単独名義の場合よりも時間や手間がかかり、トラブルのリスクも増大します。
そのため早めに共有者同士で話し合いを行うと共に、冷静かつ客観的な視点で助言を与えてくれる不動産会社のような信頼できるプロへ相談することが大切です。
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